やおい穴イベント(前編)

 「二村ヒトシ×金田淳子×岡田育「これからのやおい穴の話をしよう」」というイベントがありまして。開催概要はそのうち消えると思われるので末尾にコピペしておきます。
 ニコニコ生放送もあります。
 http://live.nicovideo.jp/watch/lv165724057
 
 このイベントの金田淳子さんの発表で使う資料の一部をお手伝いさせていただきました。その作業について少し書いてみます。

 最初にお話しをいただいた時は、まんがについては金田さんにまかせて安心なので、小説面のフォローをちょっとすればいいのかな?くらいのつもりでした。皆様ご存知のように、「やおい穴」という用法はBL小説には出てきません(まんがでもないと思います)。
 で、「穴描写といえばこれ」みたいなのを探そうとしたのですが、まずウチがジャングルすぎていろいろ出てこないので難航。それでも200冊くらいは掘り出しました。このあたりで、これ以上の探索は身の危険を伴うので、この中からどうにかしましょうという方針に変更。
 
 ここで、「よくある表現」ってどういうもんなんですかね? という疑問にとりつかれてしまいました。
 
 どういう表現が使われているのか改めて見てみましょう〜ということでピックアップを始めてみました。しかし、これ、本気でとろうとすると、エロシーンの描写の長さ・内容によりますが、1冊で50ヶ所以上の採録が必要です。しかも最も多いのは省略形かと思われるので、そこまでやろうとするときちんと読まないといけません。
 省略形というのは、「体を割り込ませた」*1「熱い塊がぬるりと押し入ってきた」*2みたいに「どこに」の部分が省略されているもののことです。これが最大派閥のような気がします。
 「ひとつになった」*3「身体を繋げてきた」*4のように、「何を」の部分が書かれていないものはそんなに多くはないですが、省略形に含みます。
 しかし、「省略が最大派閥です」では話が終わってしまうので、できる範囲で描写について考えてみることにしました。

 日にちが限られていることもあり、下記の方針で描写をメモしていくことをまず始めました。

・メインでない場面もなるべく入れるけど、落としてしまってもあまり気にしない。*5
 
・性器挿入描写近辺を中心に特徴的と思われるものを採る(恣意的です)。
 1ページに5ヶ所くらい「これ」と書いてあっても1つしか採らないとか、1冊のなかの3回のエロシーンに毎回出てくるものは3回は採るとかそんなカンジです。
 

 私の提供した資料がどう使われるかわからないので、「後編」ではイベントをふまえて今回のざっくり調査の概要をアップしようと思います。

 http://d.hatena.ne.jp/mtblanc/20140117 へつづきます。
  



 
http://analandyaoihole.peatix.com/ よりコピペ。

二村ヒトシ×金田淳子×岡田育「これからのやおい穴の話をしよう」
 

詳細
やおい穴
BL界ではごく当たり前に語られる、この未知なる穴については、これまでにも「アナルと陰嚢の間にあるとされる幻の性交器官である」「いや、誰にでもついてる肛門だろ」など諸説が囁かれてきた。

一方、現実のゲイやマゾヒストや女装者にとってのアナルも、じつは訓練次第で男性の肉体に甘美な悦楽をもたらす器官であり「その内側には秘めたる7つの性感ポイントが隠されている」という神秘的な説も。

やおい穴とアナル。この2つの「穴」は似て非なるものなのか。それとも同じものなのか? を、ホモソーシャルの巣窟・ゲンロンカフェにて真面目に徹底討論。
お尻の穴から現代の日本を覗き見ることで、女と男のあいだの暗くて深い河が、じつはそれほど暗くも深くもないことがわかるかもしれない。わからないかもしれない……。

登壇するのは、
痴女AVや女装娘AVのディレクターであり、ノンケなのになぜか男性アナルの開発に情熱を傾ける二村ヒトシ氏、
ユリイカボーイズラブ特集への寄稿をはじめ、やおい・BL・同人誌研究家として知られる社会学者の金田淳子氏、
そして、「久谷女子」などの同人サークルに参加し、文筆家・編集者として活躍する岡田育氏。

AV監督が語るリアル男子の「穴」。
やおい・BLサイドから見た「穴」。
2つの「穴」が交差する日本初の歴史的イベント(多分)を、お見逃しなく! 
腐女子や一般女子はもちろん、男性客も大歓迎。


【イベント詳細】
開場(受付開始):19時
開演:20時
定員:50名
入場券代(1ドリンク付き):2500円
500円割引 3種類:
1)cakes購読者割(cakesにて割引パスコードを告知)
2)腐女子割(割引パスコード:fujyoshi、を入力。購入時に「やおい穴は何派?」のアンケートにお答えください。女性に限ります。)
3)学生割(割引パスコード:gakusei、を入力。当日入場時に学生書提示してください)
※当日決済の方で、上記の割引希望の方は、当日入場時に受付にてお申し出ください。
※尚、当イベントは18禁とさせていただきます。

【登壇者プロフィール】
二村ヒトシ(@nimurahitoshi)
アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ、慶應義塾幼稚舎卒で慶應大学文学部中退。痴女AV・女装娘AV・ふたなり実写AVの産みの親として知られ、ソフト・オン・デマンドエスワンから監督作品を発売する一方で、4つのインディーズAVレーベルを主宰。「ゲイでもマゾでもない男性も、ペニス以外の器官で快感を味わえるようになったほうが人生が豊かになりますよ」論者。また男女の恋愛論にも定評があり、著書に『恋とセックスで幸せになる秘密』『すべてはモテるためである』(イースト・プレス)がある。

金田淳子(@kaneda_junko)
社会学者。やおいボーイズラブ・同人誌研究家。1973年富山県生まれ。東京大学法学部を卒業後、文学部に学士入学。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(社会学)。共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見信哉編著、有斐閣、2006年)の「第十章 マンガ同人誌 解釈共同体のポリティクス」。ひげ・めがね・老人・武将・ヘタレ・年下攻が大好物。ジェンダー論、社会学の視点から、やおいを研究している。「やおい穴は肛門だよ派。でもファンタジー肛門も楽しむよ」派。

岡田育(@okadaic)
編集者・文筆家。1980年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。中央公論新社で雑誌『婦人公論』や文芸書籍の編集に携わり、「アダルトグッズ評論家」の異名を得て2012年に退社。文化系WEB女子集団「久谷女子」メンバー。連載中のエッセイに『ハジの多い人生』『嫁へ行くつもりじゃなかった』。CX系の情報番組『とくダネ!』コメンテーターとして出演中。「やおい穴はアナルが一時的にメタモルフォーゼした、アナルとは別のよりファンタジックな存在だよ」派。

 



 

*1:『ただでさえ臆病な彼ら』(菅野彰桜桃書房 エクリプスロマンス/1995)p.202

*2:『オヤジだらけのシェア生活』(松雪奈々/二見書房 シャレード文庫/2011)p.215

*3:「搭」(岡本賢一/テイアイエス デディ文庫『趣向』収録/2003)p.147

*4:『年下の男』(椎崎夕/大洋図書 シャイノベルズ/2006)p.229

*5:はじめ、1冊につき特徴的な1ヶ所だけ採って終わらせようとしたけど、「特徴的」なのだけ採るとバラエティに富みすぎで訳がわからなくなるのでやめました。