すでにいろんな人が話題にしている『松苗あけみの少女まんが道』(ぶんか社)。
https://www.bunkasha.co.jp/book/b512202.html
ツイートまとめ+αです*1。
- 同人誌「木馬館」
私は「木馬館」はリアルタイムでは買っていませんが、同人誌紹介により視界には入っていて「松苗さんがいたところ」くらいの認識。表紙絵まとめ本を含め、オフセットの分はかつては古本で時々見る本でした(ゼロ代初頭くらいまで?)。それだけ部数も多かったのではないかと思います。
(青ヤキ時代に内田さんや大島さんがゲスト原稿を寄せていたということはだいぶ後になって知る。)
(我孫子三和さんや美村あきのさんがいらしたことはこの本を読むまで知らなかった。)
正直、ここのサークル、松苗さん以外の人は知らない人だなーと思っていた(すいません)のですが、今回の本を読んでどういうメンバーだったのかわかりました。「スクランブル残党」なのでその前に「スクランブル」というサークルがあったのではと思っていたけれど、そういうことはなかったみたい。
※この件、まちがっておりましたので次の記事にて訂正いたしました。
(私が調べもせずその程度のゆるさで眺めていたということです。)
- 「りぼん」
私(懐漫大学少女まんが学部)にとってはp.6~7が最高の見所でした。
p.6に「りぼん」が描かれています。1964年1月号でほぼ確定と思います。
この号、検索すれば表紙画像が出てくるんですが、実際にはもっと人物が大きいのです。松苗さんの描いたものは、すこしひいた、小顔になったものです。当時と今の美意識のちがいが端的に表れているような。
当時の「りぼん」の連載の大半は現代日本が舞台のもので、別に「ロマンチックな世界」が多い訳ではない。けれどもp.7では「女のコの好むようなロマンチックな世界は『りぼん』の中だけ……」というネームが。
当時の連載から「松苗好み」として「りぼんのワルツ」(バレエもの)、「王女ミナ子」(ドレスいっぱい)が選ばれるのは松苗さんの絵を見ているとわかるような気がしてくる部分です。
「なかよし」も購読されていた(p.8)のに「りぼん」がここで強調されているのは、集英社への心づかいもあるとは思いますが、それ以上に「りぼん」がイケイケの時代だったからと思います。このころの「りぼん」は横山光輝「ちびっこ天使」、赤塚不二夫「ひみつのアッコちゃん」、今村洋子「チャコちゃんの日記」と他の連載も豪華でした。
- 「こいきな奴ら」
初アシは「こいきな奴ら」とのことです。
『松苗あけみの少女まんが道』p.32ですと「ベッドとシーツ」とあり。
『マンガ家よゐよゐ』(なかはら★ももた/講談社)の松苗さんゲスト回(第8夜)によると「ゴージャス枕!」とあります。
この「ベッドとシーツ」「ゴージャス枕」は「こいきな奴ら ACT3 危険がいっぱい」のクリームがジュディス(兄)に起こされるシーンと思われます(電子版で確認。RMC単行本2巻80コマ目)。初出は「りぼん」1976年2月号ふろく。*2
サラッとではありますが、「マンガ家よゐよゐ」でもデビュー前後のことを語られていて「再構成したもの」「本人語り」を比べてみると、どこを見せ場ととらえていたのか(取材時に本人が強調されたのかもしれない)垣間見ることができます。カラーを塗る時にマスキングしないというびっくり情報も。併読されると楽しいと思います。
なお、小西さんがツイッターで松苗表紙のサンプルとしてあげられた「ぶ~け」1991年4月号は、なかはらさんのデビュー号。*3「マンガ家よゐよゐ」にも登場します。
https://twitter.com/torikotori/status/1271800395837222913
これが松苗あけみ先生の表紙ですよ。惚れ惚れします。(ごく最近ある方からお譲りいただいた『ぶ〜け』1991年4月号です) https://t.co/1tLsgTuRAx pic.twitter.com/csvV3Ly0jb
— 小西@図書の家 (@torikotori) 2020年6月13日
このイラストは、『ロマンスの王国』1巻表紙絵として部分的に再利用されています。
- その他雑感
「ぶ~け」の3名の画集は内田さんにも声がけがあったのにややおどろき。中堅作家のための企画だと思っていたので。うっかりしたらあのサイン会のならびに内田さんも入っていたのかー。
「●JANTA」の九段時代の雄姿が1コマ見られます(p.75)。たぶん記憶で描かれたものと思われます。<カレークラスタむけ情報
- ツイート紹介
https://twitter.com/nmisaki/status/1272376087654227969
なお、『松苗あけみの少女マンガ道』ではコミケや同人誌についても語られているのですが、「リリカ」の創刊(76年9月)よりも、四谷公会堂のコミケ(78年7月のC9)でのスクランブル残党によるパネル展の話題が先に描かれているので、時系列には注意が必要です。https://t.co/c0QF9NU237
— 三崎尚人 (@nmisaki) 2020年6月15日
*1:https://twitter.com/mtblanc_a/status/1272400065995264000 のスレッド。
*2:2月号ということは、1月3日発売(今は年内発売)=年末進行の号ではないだろうか。
*3:当時、おふたりとも「Kiss」でお仕事されていた以外にも、なかはらさんのデビュー作の審査を松苗さんがされているというご縁も。