「大奥」完結とコミケ

 よしながふみさんの「大奥」最終巻が刊行された。


 私が最終回のニュースを知った時、まず思ったのは「冬コミスケジュール?」であった。*1

 

 12月28日に最終回掲載の「メロディ」2021年2月号発売。
 2月26日に最終巻である19巻発売。

 

 もちろん、連載・単行本作業以外の仕事もあるだろうから(そもそも「きのう何食べた?」連載中だ*2)、推測でモノを言うのはよろしくない。よろしくないが、こういうことを思ってしまうのは、これがはじめてじゃないから。

 

 最初にこう思ったのは「フラワー・オブ・ライフ」の時だった。
 この作品は「ウィングス」2007年2月号が最終回。この号の発売は12月28日。最終巻は5月下旬発売だった。「フラワー・オブ・ライフ」は高校卒業で切る必要のないお話だと個人的に思っていたので、もう少し描かれると予想していた(とはいえ、最終回と聞いた時、単行本派だったのでどこまで話が進んで終わったのかは知らない)。「大奥」は2006年末に単行本が出たばかり。しばらく刊行されないことはわかっていた。
 いきなりの最終回告知にとまどいを感じつつ、「あれ、これならコミケで新刊出る?」と思った。*3

 

 よしなが作品は同人誌で刊行されたものが単行本になったり、断続的に掲載されたものが単行本になったりしているので連載とコミケ日程の関係はあまり意識してこなかった。が、ここで気づいてそういえば「西洋骨董洋菓子店」の時はどうだったっけと思う。
 「西洋骨董洋菓子店」は「ウィングス」2002年9月号(7月28日発売)が最終回。最終巻発売は同年9月25日だった。7月28日発売号の〆切の後8月11日のコミケに参加する場合、どれだけ持ち時間があるかは作家によってちがうと思う。外野の感想というか推測としては「……これってつまり夏コミ前はひっ迫した〆切がないということでは?」というものになる。

 

 商業連載が主な単行本とその最終回掲載月号をまとめてみた。*4

 

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 おわかりだろうか。
 例外はあるっぽいが、コミケの時期は〆切の状況としては厳しいものではなさそうに見える。とはいえ、あくまでも「最終回」だけを見た場合「よしながふみは大きい連載を終わらせる時、コミケとかぶらないようにしている」ように見えるという話である。平行している連載、連載以外の仕事もあるだろうからその時期「ヒマ」という話ではない。

 コミケに参加することを前提にスケジュールを組む作家は多い。よしながさんもそうなのではないかという予想の答え合わせをしたようなものと思ってください。

  

 

 話をかえる。


 この表を作るために、ざっくり連載期間と単行本発売の関係の表を作成した。読めないと思うけど一応アップする。

 

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 これを作ってみておどろいたのは、よしながさんがけっこう働いているという事実だ。

 失礼ながら、年1冊2冊しか単行本の出ない年が続いているというイメージがあった。そうなったのはむしろここ10年くらいの話で、基本的に「大奥」「きのう何食べた?」のみになって以降である。この2本の単行本は「基本年1回・2回出る年もある」という状況。あわせると年2~3冊。毎月・隔月できっちり描いていてこの冊数なんである。外野が「ヒマ」だのそれに類することを言っていい状況ではまったくない。

 デビュー後の1996年、1997年は年1冊だが、それ以降しばらくコンスタントに年3冊程度刊行している(文庫版、新装版を抜かす)。むろん例外はある。たとえば2003年は『愛すべき娘たち』の1冊しか出ていない(かわりといってはなんだが、2004年以降2010年あたりまでは新装版・文庫化が多く、トータルの単行本点数は他の時期より多い)。

 

 おどろくのは下記3つの連載は時期がかぶっていることだ。

ソルフェージュ」「こどもの体温」「ジェラールとジャック
「愛がなくても喰ってゆけます。」「大奥」「きのう何食べた?

 「西洋骨董洋菓子店」を描きながら、「1限めはやる気の民法」「ジェラールとジャック」「愛すべき娘たち」「それを言ったらおしまいよ」の収録作品を描いていたことにもおどろく。しかもこの時期は年3回はイベントに参加して同人誌の新刊を刊行している(4回の年もある)。なんというマルチタスク

 

 しかし「大奥」が終わったからには連載は1本だ。2021年後半10ヶ月(!)は「きのう何食べた?」の単行本が1冊程度出るだけだろう。いい機会なのでひと休みしていただきたいが、一読者としては少しさみしい。

 来年あたりがつんと新連載がはじまると信じています。

 

 

 


*1:聞いた時点ですでに年末のコミケはないことは判明している。

*2:「モーニング」第4週発売号で月イチ連載なので、月末は定期的な原稿作業がないのは推測できるため、冬コミ近辺は「あいている」状態と思われる、とも言えるが……。

*3:残念ながらこの時のコミケでは新刊は出ず、以降サークル活動休止の時期に入る。「フラワー・オブ・ライフ」最終回と聞いた時は知らなかったけれど、「モーニング」2007年12号(2月発売(推定))から「きのう何食べた?」が開始されるので、2006年末から年明けにかけてはその準備もあったはず。

*4:BLが少ないのは「主」ではないと思っているからではなく、同人誌再録の単行本があり、どの時点を「最終回」とするかとりづらいからです。それでも収録された範囲での最終話というのはあるけれど、同人誌初出の場合「コミケと連載のスケジュール」というテーマからはずれるため強いて入れる必要がないと判断したものです。