昨年〜今年1月にかけて3冊のBDが「BDコレクション」として刊行されました。版元は国書刊行会。
http://www.kokusho.co.jp/
私は趣味の範囲が狭く、日本のまんがでも肌にあわなくて読むのに時間がかかるものがあります。BDはもっと、と思っていました。
機会があって、『イビクス』をおそるおそる読んでみたら案外読めました。1冊はいただきものです。ありがとうございます。調子に乗って『フロム・ヘル』を読もうとしたら10ページで挫折……。
『ひとりぼっち』『アランの戦争』はちゃんと読めました。簡単に紹介したいと思います。
以下、ネタバレあり。
- 作者: パスカル・ラバテ,古永真一
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2010/10/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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不透明な絵の具を使ったかのような画面。
ロシア革命前夜に混乱の中で富を得ると予言された男が主人公です。その通りにお金持ちになるのですが、革命のどさくさで得たものですからトラブルがついてまわります。途中でフランスに送金しているという描写があったので、最後はフランスかと思いきや、イスタンブールで終わりました。イスタンブールを出ることがあっても、あんなカンジで彼は生涯を終えるのだと思います。だからここで終わらせる意味はわかります。しかし、娯楽脳なので、オチがないとなんだか物足りない……。ロシア人って話をたたまずにこういうふうに終わらせるのが好きねー(←偏見)。
- 作者: クリストフ・シャブテ,中里修作
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2010/12/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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3冊中、私のイメージするBDに最も近い作品でした。と、いっても私の中のBDは少ない情報からイメージしたものなので、たぶんまちがっています。
孤島の灯台にひとりぼっちで住む男がいます。容貌が醜いため、灯台で働いていた両親がここで暮らすのがよかろうと、彼らの死後も食料が運ばれるよう手配しています。食料を運ぶ船が去った後に取りいれるので、誰もその姿を見たことがありません。読者の前に現れるのもだいぶ進んでから。"ひとりぽっち"(彼の通称です)氏は、辞書をランダムに開いて、そこから空想を広げる遊びをします。その単語のさすものを知らないがゆえに、空想は広がっていきます。
最後にひとりぽっち氏は島を出ます。外に出たら、両親が心配したような苦労があるとわかっていても行かずにはいられない。そのはばたきの美しいところで終わっています。
ネームのないコマが多く、絵の物語るところが大きい作品。
アランの戦争――アラン・イングラム・コープの回想録 (BDコレクション)
- 作者: エマニュエルギベール,野田謙介
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2011/01/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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居酒屋で過去の話をするおっさんっていますよね? 無名者(それなりに知的な生活を送っている)としての人生なのだけど、それがその人なりの話し方で、つい聞いてしまう。頭に思い浮かんだままに時間も飛んでいく。そういうおしゃべりの調子をそのまま視覚化したような作品。
「アランの戦争」というタイトルがついていますが、戦闘シーンをショーアップして見せるような描写はありません。アランの見渡せる範囲での戦争しか描かれません。戦争が終わっても戦争時に関わった人たちとのあれこれは終わりません。兵隊→大学→軍属という経歴ですし。
時間をかけて描かれたと思われ、絵は一定しません。アランの顔はリアルだったり点目だったりと、いろいろです。はじめは慣れませんでしたが、途中からこれはフィクションではなく、アランの記憶の中の映像なのだから(ギベールが描いたものだけど)、記憶のゆらぎなのだと思うようになりました。構えて読むのではなく、おしゃべりに応じるように読み進めたい1冊でした。