上砂川市井史(札幌収穫)

 札幌収穫その3は『上砂川市井史』(木村誠一/上砂川郷土史研究会/1957)です。

 

『上砂川市井史』(木村誠一/上砂川郷土史研究会/1957)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2991993

dl.ndl.go.jp

 NDL蔵書があり、ネットで読むことができます。

 

 こちらは(おそらく在野の)郷土史研究家の著作物です。上砂川の歴史の本です。山岸度という意味では低い本です。
 前住民の話から始まり、基本的なことは公式本とそう変わらない記述が多いですが、ときどき「おや?」という俗っぽい文章が混ざります。タイトルが市井史とありますとおりです。


公式本について

 まず、公式本ってなんだという話をしておきます。
 下記の記事で紹介しましたとおり、上砂川町は公式の町史が2回刊行されています。


・記事「[小ネタ]山岸先生の出身は上砂川町なのか?」
https://mtblanc.hatenablog.com/entry/20211130/1638278804

・『上砂川町史』(上砂川町上砂川町史編纂委員会/1959)
(こちらはNDL蔵書はないので、NDLサーチのページをリンクしておきます。)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1130000796174852096

・『新上砂川町史』(上砂川町上砂川町史編纂委員会/1988)
https://id.ndl.go.jp/bib/000001917908


 新のほうでは山岸先生の項目もあり、ファンが持っていてもよい本でしょう。ただし、NDL蔵書があるので、そこまでコレクターとしての重要度は高くないです。


上砂川市井史について

 「おや?」となったのは「第十一章 鶉部落風物誌」の章。現在の上砂川町はいくつかの町や集落の合併です。鶉は今も地名としては残っているあたりのことでしょうか(上砂川中流とある)。
 風物誌の最初が火事で「六」が怪談なのです。郷土史の本に出てくる怪談。この方は、戦前から文献のない地域のことを聞き込みをおこなっていらしたとのことで、そういう話が出ることも多かったのでしょう。誰の証言であるかしっかり付記されています。
 開拓時代には怪談がないと断定。北海道のキツネは最初は人を化かすことがなかったとし、化かすようになったのは「たかだか、百二十年くらい前から」とまとめている。
 「狐狸、大蛇、鉄橋付近の怪談」は「発生と同時に夭折したかたち」とまとめています。
 そのあとに怪談ではなく、「キツネ火」「大蛇」「鉄橋附近のはなし」として目撃談が書き起こされている。
 キツネ火は「神社の山に出る」とされています(大正時代の話)。これって、2019年のトークイベントで駐車場を提供してくださった神社のことでしょうか。大蛇と鉄橋附近のはなしは別の場所で、鉄橋はバスで通ったかもしれない地域の話というのがなんとかわかるくらい。

 「もしかしてそうした話を山岸先生も耳にしたかもしれない」という程度のことではありますが、昭和20年代から30年代にかけて山岸先生が親しんだ土地の怪異(のようなもの)の話を具体的に読むことができるのは、興がそそられるものです。

 歴史の本かと思ったら、怪談の話があったというちょっとしたおどろきとともに、この本の購入を決めました。

 

 書影です。なんのこっちゃという写真ですみません。この本、図書館の廃棄本でよれよれなのです。NDL蔵書と色がちがうのは、グラシン紙もありますが、ボール紙で補強されているためです。

 廃棄は1980年。旧蔵の「北海道砂川南高等学校」は2004年に他校と統合され、現在は北海道砂川高等学校という名称なんだそう。廃棄は、統合より昔です。ボロボロになったから廃棄されたのか、公式本があるから廃棄されたのか。
 そして廃棄処分のあと、古本屋で私に買われるまでの間にも所有者がいたはず。砂川市内からどこかをさまよった後、札幌の古本屋へゆき、発行から67年後に関東へたどり着いたということになります。

 そういうところを含め、ボロいけれど私にとっては、なかなか楽める本であると思います。


余談

 他にも買った本もありますが、まんが関係はこれくらい。収穫報告はここまでとします。
 札幌にいるあいだに開催された即売会で、おつかいをお願いしていた同人誌は通販ありましたが、すぐに売り切れたようです。本当にありがとうございました。