完全版「日出処の天子」まで

 メディア・ファクトリーから『完全版 日出処の天子』1が発売されました。ということで他の記事も書きますが、4月までは山岸祭りの予定。

 とりあえずでこれまでの刊行情報をまとめてみます。

 初出を含めた基礎情報はサイト「山岸凉子のカテゴライズの夜は更けて…」を参照。
   http://kategories.com/
 
■HC版
巻数:11
刊行時期:1980年〜1984年
 「日出処の天子」は「LaLa」1980年4月号〜1984年6月号まで掲載された後、白泉社花とゆめコミックスで刊行されました。カラーページの収録はナシ(表紙はもちろんカラーです)。11巻が異常に薄いことで有名。
 雑誌掲載時、前回の最終ページが今回の1ページ目ということを山岸さんは時々なさる(「妖精王」あたりからか?)のですが、そういう重複ページははぶかれています。

■作品集版
巻数:6
刊行時期:1984年〜1985年
 白泉社より全12巻が刊行されたB6ハードカバーの作品集のうち半分が「日出処の天子」。当時としてはお高い980円のまんが単行本が出始めたころ。

 未完ですが「馬屋古女王」の「LaLa」掲載や作品集の刊行などがありますので、HC11巻刊行後に即白泉社との仕事の縁が切れたということはないのです。作品集最終巻刊記の1985年1月はおくづけ表記なので、ほぼ1984年いっぱいまでは白泉のお仕事がメインだったということになるかと思います。角川では1985年6月発売の「ASUKA」(角川書店)創刊号から執筆されています。*1

■全集版
巻数:8
刊行時期:1986年
 角川書店「あすかコミックス・スペシャル」のワクで何人かの作家さんの全集が刊行されたうちのひとつ。B6ソフトカバー。回ごとにくぎって収録。

■文庫版
巻数:7
刊行時期:1994年
 白泉社より刊行。この年はひさしぶりに「セリエミステリー」「LaLa」など白泉社の雑誌のお仕事をされています。各巻に解説がつきました。ページの都合か、巻末の回は途中までしか収録されない場合があります。

■完全版
巻数:7
刊行時期:2011年〜2012年(予定)
 メディア・ファクトリーから完全版として刊行。A5ソフトカバー。扉ページとカラーページが全部入るのは初出以来はじめて。文庫版と同じ巻数ですが、(少なくとも1巻は)回ごとにくぎって収録されていますので、巻ごとの内容はちがってくると推察されます。

 完全版のすばらしいところは、カラーです。作品集版もカラーはがんばっているのですが、今の印刷技術と比べてしまうと劣ります。
 私、前から思っていたのですが1、2、3回目の扉を見てください。このカラー絵だけで1ヶ月かかりそうな気がしませんか? このレベルの絵を3ヶ月連続で繰り出した上に本文までがっつり描かれた山岸先生はおかしいんじゃないかな? と思います。実際、このころはおかしかったと「ダ・ヴィンチ」2012年1月号掲載の完全版刊行記念インタビューでもおっしゃってますけど。完全版が出て、こういう話もできるようになりました。刊行終了までこういう感動を忘れずについていきたいと思います。

    ★

 発売を記念して原画展も行われるそうで。
   http://natalie.mu/comic/news/60770
   http://otalab.net/news/detail.php?news_id=2156
 私が把握している範囲で、過去に「日出処の天子」原画を見られたのは1998年「少女まんがの世界」展、2002年「ぼくらのヒーロー&ヒロイン」展の2回。出てきたことのないものが見られるとうれしいです。


*1:このあたりの仕事関係については「山岸凉子のカテゴライズの夜は更けて…」を参照。白泉と角川の間に「プチフラワー」(小学館)、「ぶ〜け」(集英社)などで仕事されています。