日本近代文学会例会

 「日本近代文学会2013年度12月例会」第六会場午後の部「BLの中の世界/世界の中のBL 「わたしたち」は何に萌えているのか」に行ってきました(長い……)。
 要旨集はこちら↓(PDF)。
   http://amjls.web.fc2.com/PDF2013/youshi4.pdf

 発表者は岩川ありささん、秦美香子さん、守如子さん、杉本ジェシカさん。コメンテーターが藤本由香里さん。
 1名40分程度の発表を4本連続で行い、藤本さんのコメント30分くらい。あとは質疑という構成。終了は17時45分くらいだったので、全体的に押し気味の雰囲気で駆け足でした。30分の発表って内容の正確さを期すれば期するほどたいしたことは言えないです。4名ともざっくりつるっとの方向を選んでおられました。なので、荒っぽい内容であるのは織込み済というのが大前提。

 私の感想としては「荒っぽいけどよくまとまったパネルだなあ」というのがまずあります。ただ、老人の繰り言的感想があり、それを以下に述べます。

 岩川さんがまず、このパネルを組んだ趣旨を説明されました。文学会だけど、基本的には地味な文学研究のというよりクィア・リーディングより。誠実な内容だと思います。

 BLの歴史をざっくり述べられたのですが、妥当な内容なのに何か居心地の悪さがあり。なんなのかなーと。もちろんBLの歴史の紹介がこのパネルの趣旨ではないので、全体としては割とどうでもいいことの部類に属するかと思います。

 とはいえ同じような本を参照した同じようなまとめを聞いていると「これでいいのかなあ」という気分になるのです。

 今、参照されている『密やかな教育』にしろ「ユリイカ」の腐女子特集の歴史部分については、私と同じような世代もしくはそれ以上の人が書いている訳です。書いている人はだいたい親JUNEもしくは少女まんがリテラシーの高い方です。
 で、これって今の腐女子とは別ですよね。今の若い腐女子は「JUNE」も読んでいないし、メインで愛好しているまんがは少女まんがではない。

 どうしてそうなったのか。

 そういう視点を持って、1970年代のJUNEと少女まんが以外の部分を洗ってくれる人がそろそろ登場してもいいんじゃないかと思います。

 1980年代におたくの物心がついた世代だと、「JUNE」は読んだことあるけど継続して読んでいた訳ではなく、少女まんがより少年まんがという人はめずらしくありません。
 「JUNE」は大事で、総括されることが必要だったと思います。そしてそれはほぼ終わったのではないかと思います。

 言い方は悪いけれど、おばちゃんたちが自分の体験を手掛かりに捏造した歴史を素直に信じていいのかな? という危惧があります。若者はほっといても湧いてくるので老人性の杞憂にすぎないとは思いますが。
 もちろん、捏造というのは言いすぎで、これまで記述されているのは私を含むおばちゃんにとっての真実ではあると思います。けれども、それ以外のもの世の中にはある。1970年代に出た「ぼくら語り」が広まった後に乗り越えられていったようなことが必要なんじゃないかと思います。

 そういう感想を、おばちゃんのひとりとして持ちました。
 
 あと、1点だけあげるとレジュメに参考文献をきちんと書かない人がいらしたのはどうかと思いました。この辺はもう指摘されていると思いますが。