NDL資料のデジタル化 その2

 6月27日にドカッと公開されたNDLのデジタル化資料話題のつづき。まんがとはそんなに関係ないんで項目わけます。
   http://www.ndl.go.jp/
 前トピでは純粋にリストとしての感想でした。今回は国会図書館の一利用者としての感想などを書きたいと思います。現在はまだ提供は行われていない(と思われる)ので、ここに書いたことはあくまでも利用前の感想です。

 NDLの目次といえば雑誌記事索引検索があります。

>> トップ > 国立国会図書館蔵書検索・申込システム > 雑誌記事索引検索

 ↑のようにたどっていくと出てきます。
 今回のネタは雑誌「思想の科学」1966年4月(49号)号です。「思想の科学」にしたのは、雑誌記事索引検索とデジタル化の両方にひっかかってきそうなやや古めの雑誌というゆるーい基準。無作為に近いカンジで選びました。巻号については検索してテキトーにカーソルにあたった号だったからです。

 雑誌記事索引検索は学術誌優先で採録され、作者や記事名での索引では国内最大規模のデータベースです。

 今回はまず、デジタル化資料の検索で「思想の科学」をヒットさせ、「桑原武夫」が書いているのを確認。この人なら雑誌記事索引検索でも何かひっかかるだろーということで検索。1966年4月号を抽出しました。長いのでたたみます。

 雑誌記事索引で「桑原武夫」「思想の科学」で検索し、「所蔵/申込み」→「他の記事一覧」とたどるとこの号の記事一覧になります。
 それがこちら。

 目次部分をコピペします。

(49) 1966.04
73〜78 学生の思想的自立について
89〜94 「大学改革」に関する文献解題
24〜29 大学教育に,いま何が必要か
2〜11 大学の内側と外側(座談会)
57〜62 高校生の期待する大学像
38〜45 大学個性化への道--「大学の庭」を読んで
12〜17 大学改革論
18〜23 大学再建のための提案
79〜82 女子学生対策試案
50〜56 憤怒をこめてわが学生生活を想う
2〜62 特集・大学の改革
95〜103 志賀直哉論(4)--事実の文学
83〜88 映画のなかの大学生
30〜37 学問の民主化ということについて坊主と語る

 順番がいまいち不明です。作者名が一覧では出ませんが、採録はされているので実見せずとも検索で判明できます。
 採録されていませんが、遠隔コピーの場合は、「表紙」「目次」などの指定も可能です。

 デジタル化資料の検索http://dl.ndl.go.jp/#magazinesの同号の目次表示がこんなん。

 まずは、こちら単独で気づいたことを。

 表示がないので、右の一覧のどの号の「目次・階層」ボタンを押したのか不明なところが気になります。テキトーに押している場合とか、押しまちがえたりした場合でもわからないということで不便です。ここは改善を望みます

 次に気がつくのは目次利用として考えるとみづらいということです。左の細長い空間にあるだけなので。しかし、本来、右の広いところに本の画像が出ることを前提にしたデザインなのでこれは仕方ないような気も。記事タイトルが長いとか記事数が多いとかの場合は閲覧に不便が出そうな気も。

 デジタル化のほうでヒットする「思想の科学」1966年4月号の目次はこんなんです。

 目次部分をコピペします。

大学の内側と外側(座談会) / 桑原武夫/2〜11
大学改革論 / 遠山啓/12〜17
大学再建のための提案 / 永井道雄/18〜23
大学教育に,いま何が必要か / 川喜田二郎/24〜29
学問の民主化ということについて坊主と語る / 前田俊彦/30〜37
大学個性化への道--「大学の庭」を読んで / 新堀通也/38〜45
〈アンケート〉あなたが学長だったら をどう改革しますか / 畔上道雄 ; 佃實夫 ; 緑会委員有志/p46〜49
憤怒をこめてわが学生生活を想う / 八木康敞/50〜56
高校生の期待する大学像 / 斎藤静之/57〜62
学生の思想的自立について / 池田諭/73〜78
女子学生対策試案 / 丸山邦男/79〜82
映画のなかの大学生 / 佐藤忠男/83〜88
「大学改革」に関する文献解題 / 伊藤恒夫/89〜94
志賀直哉論(4)--事実の文学 / 今村太平/95〜103
阿波自由党始末記(第四回) / 佃實夫/p104〜119

 デジタル化のほうも単独で気づいたことを。

 まず気づくのはページ数を示す「p」が入ったり入っていなかったりするところ。この不統一はありえないのではないか?

 記事「〈アンケート〉あなたが学長だったら をどう改革しますか」の「学長だったら」の後にスペースあり。これはホントにこういうタイトルなんでしょうか? 何か表示できない字か絵でも入っていたのでは?と疑問を持たされます。

 前トピで例にした「別冊りぼん」は記事の順番がそろってませんでしたが、こちらはちゃんと順番になっています。目次を表示させる動作としては「目次・階層」ボタンを押す以外のことはやっていないので、操作の問題ではないと考えます。

 両方を比べて気づいたこと。

 「--」や「,」などの表記統一の規則は同一のものを使用しているもよう。

 「〈アンケート〉あなたが学長だったら をどう改革しますか」「阿波自由党始末記(第四回)」のふたつの記事が雑誌記事索引には入っていません。雑誌記事索引は論文でないものは採録されていない比率が高いので仕方ないです。エッセイ的なものでも文章であれば採録されていることが多いのだけど、小説などの「作品」扱いとなるとなるものは基本ぬかされます。アンケートと「阿波自由党始末記」がそれに該当するのかどうかわかりませんが、とにかく採録基準に満たなかったようです。雑誌記事索引ではページ数がないので、46〜49ページには何かあるとデータから気づけますが、104〜119ページのほうはちょっと気づけないでしょうねー。通常検索で出てもデジタル資料を使ってねという表示になる→デジタル化のほうで検索をやり直すということになるはずなので、デジタル化の目次のほうがきちんとしていれば問題ないです。
 
 こんなことをしたのは、雑誌記事索引の内容をデジタル化が流用しているんじゃないの〜?という素朴な疑問を検証するためです。とりあえずは「していないようだ」という結論になりました。これってずっと並行して採録していくのでしょうか? ゆくゆくはデジタル化1本にしてしまっていいような気がします。その場合は、デジタル化の一覧が複写とも連動することが必要。
 
 あと、気になるのは検索した資料はどういうかたちで提供されていくのか?ということです。現在は、所蔵一覧の「巻号年月等」の項目に「(当館で所蔵している資料はすべてデジタル化済です。資料保存のためデジタルデータをご利用下さい。)」とある割には所蔵館での表示は「利用できません」となっています。
 デジタル化資料の提供はまだやっていないという理解でよろしいんでしょうか(現地に行ってないのでわからない)*1
 目的を鑑みると、今後、デジタル化された資料は現物は提供しないということかと(データをとったものはこれまでの例からして関西送りになるものと思われます)。目次が作られたのはうれしいのですが、さみしいことでもあります。でも資料の提供と保存の両立をせねばならない館の場合、当然の決断と言えます。

 データ化された資料は「国立国会図書館内でご覧いただくことができます」と記載されています。そうすると「館内」ってどこ?という話になりますですね。今のところ、所蔵館となっているところのことかな?という表示のされかたですが、データであるからには原資料を保管していない館での閲覧も可能になります。まず考えられるのは関西館での閲覧です。それでどうかなーと思って東西の電子情報提供サービスの記載を確認してみました。

 まずは東京。

トップ > 東京本館 > 電子情報提供サービス > 主なデータベース
http://www.ndl.go.jp/jp/service/tokyo/data_eips/contents.html
 
日本語データベース
総記・新聞:大宅壮一文庫雑誌記事検索、ジャパンナレッジ・プラス、日経テレコン21など
科学技術分野:医中誌Web、J-STAGE、JDreamIIなど
社会科学分野:会社四季報TKCローライブラリーなど
人文科学分野:現代日本文学全集綜覧、翻訳図書目録など
アジア言語データベース
総合:中国学術雑誌全文データベース、KISSなど
欧文データベース
総合:CSA Illumina、EBSCO host、BL inside webなど
科学技術分野:Bio One、ScienceDirect、Web of Knowledgeなど
社会科学分野:House of Commons Prliamentary Papers、JSTOR、LexisNexis lexis.comなど
人文科学分野:RISM
当館作成データベース
総合:近代デジタルライブラリーなど

 そして関西。

トップ > 関西館 > 利用案内 > 電子情報提供サービス
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/guide/keips.html
 
提供コンテンツ
電子ジャーナル、オンラインデータベース
主な電子ジャーナル・オンラインデータベース
アジア関係のオンラインデータベース(中国:雑誌・新聞、韓国:雑誌)
個々の収録タイトル(欧文)については、「電子ジャーナル提供タイトルリスト」をご覧ください。
CD/DVD-ROM等
主なCD/DVD(あらかじめ専用の端末にセットされています。)
アジア関係のCD/DVD(あらかじめ専用の端末にセットされています。)
その他のCD/DVD(図書や雑誌に付属するものもご覧いただけます。タイトル毎に請求が必要です。ご利用いただけないものもあります。)
国立国会図書館作成のコンテンツ
NDL-OPAC、アジア言語OPAC、当館ホームページなどのオンラインコンテンツ
レファレンス情報システム
インターネット

 う〜ん……東西独自更新されているのがわかる記載ですね(笑)
 両方ともデジタル化資料のデの字もありません。「国立国会図書館作成のコンテンツ」に該当するかと思われるのですが、東京が近デジ、関西がレファ系中心という*2
 デジタル化データが利用開始になった暁にはさっくりわかりやすくなっていてほしいです。このままですと原資料提供に慣れている人たちはとまどうと思います。せっかくデジタル化されたのですから一利用者にとって「前のほうがよかった……」と思わせないサービスを提供していただきたいです。
 ついでなので個人的な要望を書くと、デジタル化資料は閲覧冊数制限をとっぱらっていただけるとうれしいです(し、可能だと思う)。ただ、厳密な意味で「原資料の代替」ということで、紙でできないことはしないという方針が立てられた場合、1資料1閲覧者になりますですね。ここはあんまり厳密でない運用を望みます*3。長期的には、時間制限があってよいので、取り置きとかしおり機能とか前回最終の状態を再生できるとかができるようになるとといいなー(ドリーム状態)。
 所蔵していないものを国会のデータで補うのはいいけど、他館はデータ化をなるべくやめていただきたいです。最終保存施設としての国会図書館がはっきりしたのだから、(少なくとも国会にある資料は)他の図書館では現物を見せるのはやめないでいただきたいです。データ=国会、現物=他図書館というすみわけにしてほしいです。国会にない資料を持っている館は国会の予算でデータ化できるといいなー(そしてその資料はデジタル蔵書としてNDL館内で見られるようにする)。これも長期的な希望というか妄想ですが。

 データ化ということは場所の問題がほぼなくなるということですから、関西以外の地方に閲覧拠点ができたり、都道府県などの公共図書館内に国会図書館の派出所ができちゃう可能性がある……というかそれを私は望みます。長い時間がかかると思いますが。



7/12 22:30の追記
 昨日とりあげた「別冊りぼん」を含めたまんが雑誌のデジタル化データが検索でヒットしなくなりました。替わりに(?)通常の提供は復活。しばらくは原資料にあたれるようです。デジタルでの提供時期がのびたと思っていいんでしょうか? それにしてもあのデータベースにアクセスできないのは不便なので、検索はそのまんまにしてほしかったなー。

*1:デジタル化の検索結果には利用可能と出ますが、この状態はデジタル化資料の項目な気づいている人のみがたどりつけるものになります。利用できるのなら従来の利用案内やOPACに反映されるものと思っております。デジタル化資料は「A端末」で閲覧できると書かれているのですが、一般のOPACでは状態が「利用できません」なのでまだ閲覧できないものと理解します。

*2:つか、関西って近デジ使えないの……?

*3:その後(7月14日)にhttp://dl.ndl.go.jp/ja/help.htmlを見ていて「館内限定資料の閲覧において、同一の資料に対する同時利用は、当該資料の所蔵部数(基本的に1部)を超えない範囲とさせていただいております。」という記述に気付いたので、現状、1資料1閲覧者のもよう。