漫画新批評大系vol.16

 夏に予告された「亜庭じゅん大全」は、冬に「漫画新批評大系 vol.16」として刊行されました。800ページを超える大部。なんとか31日に入手。

 すでに高取さんが紹介されています。
   http://yaplog.jp/takatoriei/archive/1341

 まだパラ見ですが、私の印象でも簡単に紹介を。

 おおざっぱに前半分がまんが関係の文章で、うしろ半分がMGMを中心とした同人誌関係の文章です。まんが関係の文章は相当がんばれば掲載誌で読めるものが多いとは思いますが、同人関係のものは難易度高すぎなので、まとまったのは本当にうれしいです。
 各文章に注がついており、どういう媒体に掲載されたのかがわかるようになっています。手書きで掲載された800ページ分の文章を打ち込む作業だけで気が遠くなるのに、さらに注まで。この労力に頭がさがります。

 まんが関係のものはぽつぽつと読んだことがあるものがまじっていますが、大半は読んだことのないもの。同人関係のものはほぼ読んだことがないものです。私がこれまで読んでいた亜庭さんの文章は、全仕事量に対してほんの一部だろうと思ってはいましたが、ここまでたくさんあったとは。これからでも読めるのは幸せなことです。

 C81はあくまでも先行販売で、MGM98で売るのがメインだそうです。*1

 以下、ちょっとだけ読んでみた範囲での感想などを書いてみたいと思います。

 『コミックマーケット創世記』(霜月たかなか朝日新書)に一部採録された「マニア運動体論」が全文読めます。もともと6回連載なんで長いです。序説では理想を語り、一種の言挙げのように「マニア」をあおっていましたが、2回目以降は現状に対する批判の色が強くなっていきます。理想を語り、批判していく一方で、マニアの活動の限界を認めているのはさすがというか当然というか。問題がCOMに収斂していくのは時代ですね。*2
 新批評大系13号掲載の「夢の明日・明日の夢」が↑に対するひとつの答えなのかなーと思います。こちらは掲載誌で読んでいますが、こうして続けて読んではじめてこういうふうに思いました。

 末尾に初期評論の章があり、「COM」に投稿されたものも掲載されています。これは割と最近に誌面で読んで「めちゃくちゃやなー」と思っていたもの。「あっぷるこあ」掲載の「薄明の現在」も初期の章に入っています。*3
 この本には「漫画ジャーナル(まんがジャーナル)」掲載のものは収録されていません。それが残念。
 
2012/01/22の追記あり
http://d.hatena.ne.jp/mtblanc/20120122
 


*1:コミケ会場では通販受付をしていました。

*2:よく考えたらCOM特集掲載なんでCOMからここまで問題を広げられるのはーとするべきか。

*3:1号掲載の「大阪まんが史」の著者は「高宮成河・辰巳隆俊」で、辰巳隆俊さんが亜庭さんだと思っていたのだけど、収録されていないので違うみたいです??? それとも亜庭名義ではないものは落とされたのか?