少女に関する3冊

 昨年の秋から2月までに出版された戦前の女学生に関する著作を読みました。『少女マンガジェンダー表象論』(押山美知子彩流社)といい、最近は少女に関する論のまとめの時期に入っているのでしょうか。

 まずは昨年の10月に読了したこちら。

ミッション・スクール (中公新書)

ミッション・スクール (中公新書)

・『ミッション・スクール』(佐藤八寿子中公新書

───以下目次───
>> 序章 ミッション・スク−ルとは何か
>> 第1章 忌避と羨望のアンビヴァレンス−明治
>> 第2章 ミッション・ガ−ル 明治から大正へ
>> 第3章 ファム・ファタル登場 大正から昭和へ
>> 第4章 大衆の欲望回路の中で 昭和から平成へ
>> おわりに これからのミッション・スク−ル
───ここまで───

 ミッション・スクールのイメージがどう受容されてきたのかを書いてある本。
 ほとんどは女子とはいえミッションというからには男子について書かれています。
 グラフとか表とかいっぱいあるのがうれしい。そして参考文献は10頁! 今野緒雪が入っているのは導入部からして予想の範囲内。白薔薇明玖はまで入っているのがなんとも。この方、かなり好きですね?w


女学校と女学生―教養・たしなみ・モダン文化 (中公新書)

女学校と女学生―教養・たしなみ・モダン文化 (中公新書)

・『女学校と女学生 教養・たしなみ・モダン文化』(稲垣恭子中公新書

───以下目次───。
>>  序 章 女学生とは
>>  第1章 文学少女
>>  第2章 女学生の手紙の世界
>>  第3章 堕落女学生・不良少女・モダンガール
>>  第4章 ミッション女学生
>>  終 章 「軽薄な知」の系譜
───ここまで───

 戦前の女学生の概要を書いた本。研究として行ったインタビューおよびとにかく豊富な文献が的確に引用されているのがすてきです。もともと社史とか学校史って大好きなので、その資料の豊富さにも萌えました。
 終章のまとめも戦後の経過も入れたものでしっかりしています。新書というからにはこれくらいの情報がほしいという希望どおりの内容。

「少女」の社会史 (双書ジェンダー分析)

「少女」の社会史 (双書ジェンダー分析)

・『「少女」の社会史』(今田絵里香/勁草書房

───以下目次───
>> 序 章 「少女」と都市新中間層
>> I 「少女」の誕生とその変遷
>> 第1章 「少女」の誕生――少女雑誌以前
>> 第2章 「少女」の身体の変遷
>> 第3章 近代家族と「少女」
>> 第4章 「少女」の成功
>> II 「少女」の受容
>> 第5章 少女ネットワーク
>> 第6章 エスという親密な関係
>> 終章 「子ども」のジェンダー
───ここまで───

 くわしくはこちら↓。
 http://www.populus.est.co.jp/asp/booksearch/detail.asp?isbn=ISBN978-4-326-64878-8

 雑誌を通して見る少女についての本。子供、少年(男の子供という意味ではなく年少者という意味の)から少女が分離し、少女のイメージを成立させる過程をていねいにたどっています。『女学校と女学生』(稲垣恭子)に続いて読むとかなり理解が早いと思います。
 4章までと5、6章がほぼ同量。後半部の少女雑誌の分析部分が圧倒的におもしろいです。これまでの論についても言及されていて、少女論の総まとめとしても読めます。終章のまとめが結論としてきちんとしているので、ここだけ読んでもこの本の意味がわかります。
 全体的に少年雑誌を視野に入れた論でそこもいいところなのですが、1930年代が少女雑誌のピークとする部分(第5章)では少年雑誌について伺わせる記述がなくなったのは残念。データはいらないけれど、少年雑誌もこのころピークを迎えていたことをチラッとでも書いてあれば論によりいっそうの厚みが出たのにと思いました。

 博士論文をもとにした労作で内容がちゃんとしてるのはもちろん、少年東郷会の出し方などなるほどなるほどと思わせるしかけもあり、読み物としてもたのしい本でした。

 それにしても1999年の弥生美術館「女学生の友」展に行けなかったのは残念。