- 作者: 菅聡子,武内佳代,ドラージ土屋浩美
- 出版社/メーカー: 明治書院
- 発売日: 2012/05/01
- メディア: 単行本
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読了。
少女まんがに対する愛にあふれていて、とても気持のよい本です。しかし、いつもの重箱隅な感想が勝ってしまい、書きます。すみません。たとみます。
読後にまず思ったのは「この本はいったい誰を対象に編まれたのか」ということでした。
「少女マンガの魅力を多面的に紹介」(p.173)と書かれてはいます。だったら歴史についてはもっとコンパクトでいいと思うし、批評についてはいらないのでは? 執筆者に研究者の方が多いので、こうなってしまったのかな?としいう気がします。これは個人的な意見としても誰に向けて魅力を紹介したいのかはわかりません。少女マンガをよく知らないというのは大前提としても、まんがについてはある程度知っている人? それともまんがについてはまったく知らないけど少女まんがに興味のある人?*1
と、いう疑問を持ったのはp.33の「『C翼』」というのを見たから。ここには特に注などはありません。だとしたら「C翼が解説なしで理解できる人」が読者として想定されていることになります。このページ、「少女マンガとBL(ボーイズラブ) 性とジェンダーの冒険」(内海紀子さん執筆)という1ページのコーナーです。この文章についてもいろいろ疑問があり……。まず、栗本薫やル=グウィンが出てきたりして、まんがの話と小説の話が断りナシに混在しています。その2ページ前に「評論家・作家の中島梓/栗本薫」とあるのでいいのかな?
そして末尾で「原獣文書」をBLまんがとして紹介。みなさんご存じのとおり、なるしまさんは商業ではボーイズラブレーベルからは単行本は出されていません。「原獣文書」もBLのような道具立てがあり、もちろんBLと言っても悪くはないのだけどBL代表かというとどうかなーという内容です。同人系の作家さんとしてあげるのならばいいと思いますが、1ページの記事でBLを語るのに本当に必要な作品なのでしょうか。BLのSF作品はどちらかというと小説のほうが水準が高いので選ぶのに苦労されたのだと思いますが、違和感ありました。
あとはちいさなツッコミです。
p.21
「フェミニズムSF」ってなに? ジェンダーSFはあると思うけど……。
この段落に「マージナル」があがっているのですがいまいち意図がわかりにくい。長いですが該当箇所を引用します(1980年代のヒロインについて書かれています)。
七〇年代のウーマンリブ、あるい人工的なミツバチ型社会を描いて強烈に「母性」を異化してみせた萩尾望都『マージナル』のようなフェミニズムSFからは遠く離れた地点において、「普通」の「少女」たちも少しずつ、しかし着実に、受動性という女性ジェンダーを脱皮した新たなメンタリティを準備しつつありました。
ごく普通の(極端な環境ではない)少女でも受動的ではなくなっていってるよというくらいの意味だとは思いましたが、ここで「マージナル」って必要なの?
p.44
「少女マンガとメディアミックス そのはじまりは……」という記事。
なんでラジオ化がないのかなあ? 具体的な作品名は省略しての1〜2行の説明だけでも必要だったのでは? 昭和30年代の月刊少女誌(つーか幼女誌)を読んでいるとしょっちゅうラジオ化記事が出てくるよ。今とちがって聞ける地域は限られているようなものだったけど、「そのはじまりは……」という副題をつけた以上、不可欠なのでは?
あと、これは私だったらだけど、「さくらん」(安野モヨコ)は入れないかな。「モーニング」だもの。
p.91
「田川水泡」は「田河水泡」の誤植。何ヶ所もあるのはさすがにはずかしい。
p.157
里中さんの「ピアの肖像」を応募された賞の名前なんですが。ここでは「第一回講談社新人漫画賞」ってなっています。里中さんの公式サイト(や公式プロフィール)で「第1回講談社新人漫画賞」ってなっています。
http://satonaka-machiko.com/nenpyo/work_profile.php
しかし、これはちがいます。正確には「少年少女漫画作品の懸賞募集」です。「少年マガジン」1964年2月16日号(p.50)で確認しました。コピーの画像をつけます。これってどこかのタイミングで直すべきだと思うんですが。
ついでに書くと私の確認した範囲だと3回目〜5回目は「少年少女まんが作品の懸賞募集」*2という表記でした。