「竹宮惠子監修 原画´(ダッシュ)展示シリーズ 「幻想と日常の間 〜西谷祥子・おおやちき・波津彬子」関連イベント」(長い)に参加してまいりました。
末尾に公式サイトのイベント概要からのコピペを貼り付けます。
今回のメモは竹宮惠子さん、波津彬子さん、佐川俊彦さん、東園子さん(司会)のトーク部分の重箱隅になります。
「『JUNE』からやおいまで」というテーマで、この3名が語るというのでとても楽しみにしていました。期待どおりのたのしいイベントだったのですが、いくつか気になった点がありますのでメモします。
とりあえずトークに出てきた事項を時系列にまとめたものを出します。
以下、感想。
竹宮さん、波津さんのJUNEに関わっておられた時期、フィールドが微妙にちがうので心配していたけれど、思ったより話はかみあっていた。当時の少女まんが業界のせまさを思うと当然かも。
3人いるといつの話をしているかよくわからない。↑みたいなのを投影してほしかった(ので、作りました)(指摘を受けて修正しました)。
データばかりでなく、さまざまな雑誌や「らっぽり」現物がばんばん映写されているのは迫力あり、うれしいところでした。
波津さんとまつざきさんのJUNEからALLANまでトークがみたい。
カセットJUNEの話は残すのはよい(佐川さんの意見)。誰かー。
以下、ツッコミ。
・「ALLAN」の刊行時期
「ALLAN」は、ほぼ旧Jと大Jのすき間にしか刊行されていなかったのではないかという話題でした。
旧Jが1979年8月号まで、大Jが1981年10月号から。ということで約2年のブランク。
「ALLAN」は1980年「OUT」11月号増刊からスタート。1984年6月号で廃刊。3.5年の刊行期間のうち、J誌まない時期はは約1年。2.5年は共存している。
・印刷について
波津さん発言だったと思うのですが「当時はコピーしかなかった」というご発言があり。
コピーがアオヤキか乾式コピーなのかが不明。「当時」とはいつかも不明。「本当にコピーしか印刷手段がなかった」のか「手軽な印刷手段がコピーしかなかった」のか。
時期は、波津さんが同人誌にかかわっていらしたころかな、と思うのですがその「同人誌」とは何なのか。主宰のひとりだった「らっぽり」なのか、それともその前の「らっぽんぽん」なのか。
言及されていないことをこちらが推測するのも意味ないので、「らっぽり」から離れて考えると、コミケでそれなりに大きいサークルだった「漫画新批評大系」は1975年のvol.2まで、「楽書館」は1978年No.55までアオヤキ……という状況。また、漫研QUEENや漫研風変わりな詩人たちあたりは1975年頃にオフセットの会報を定期刊行しています。
「コピーしかなかった」という時代は「印刷所がない」という時代でもあるのですが、それも「同人誌印刷をひきうけてくれるところがない(他をメインのところに頼み込んでやってもらった)」と「同人誌印刷専門の印刷所がない」という場合があり、気をつけて聞かないといけないところです。
……ということから「コピーしかなかった」というのは1970年代前半より前になってしまうのですが、正解は?
ここはもう少し情報がほしいところでした。
また、居住地域、1〜2年の差でだいぶ話が変わってくるところなので他の方のお話しも伺いたいところでした(これはつっこみではなく感想です)。
・コミケの男女比
トークの流れとは関係なく、東さんが話題にだされたものです。私の記憶が正しければ、佐川さんが「7割8割くらいは男性だったんじゃないかなあ」という御返答をされていたように思います。
この件、ずーーーーっと話題になって、そのたびにいろんなご意見の出るめんどくさいところなのです。この点、どうこう申し上げる立場にはありませんが、話題として出すのならば相応の覚悟というか準備を持ってふっていただきたかったです。
・「夜追」
「やおい」の言葉がつくられるきっかけとなった磨留美樹子さんの短編ということで名前があがりました。波津さんは「ラヴリ」掲載とおっしゃっていたと思います。
が、坂田靖子データベースの「ラヴリ」の一覧を見ても掲載されていません。他の関連同人誌ではないかとも思われますが、少なくともhaneusagiさんがリストアップされたなかにはありません。
じゃあ、肉筆版じゃないの?とも思うのですが、磨留さんが参加されたのがオフセット版の2号からと思われるので、それ以前とは考えづらい。もちろん肉筆版かもしれないけれど、部外者の立場では確認しようがありません。
未調査の「ラヴリ」がもしあれば、その可能性はあるものの、「ラヴリ」関連の何かではないか、という推測で止まらざるを得ません。
「夜追」については「掲載誌を発見できないかぎり断定しない」もしくは「「ラヴリ」関連の何かではないか」くらいで止めておくべきと思います。
このイベント関係のtogetterまとめをつくりました。
波津彬子×佐川俊彦×竹宮惠子イベント
https://togetter.com/li/1229344
参考
『総特集 坂田靖子 ふしぎの国のマンガ描き』(河出書房)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309276953/
坂田靖子データベース
http://haneusagi.la.coocan.jp/sakata/index.html
コミックマーケット30周年史『コミックマーケット30’sファイル』PDFの公開
http://www.comiket.co.jp/archives/30th/
コミケット30周年記念調査報告(P289-305)(PDF)
http://www2.comiket.co.jp/archives/30th/30th_289_305.pdf
米沢嘉博記念図書館 耽美の誕生展_2011年度
http://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/exh-tanbi.html
図書の家 米沢嘉博の仕事:暫定版 版元別[掲載状況調べ]迷宮
http://www.toshonoie.net/shojo/05_list/yonezawa_works/yonezawa_list_before3_mk.html
楽書館 02/24: 機関紙16「創作 楽書館」52〜55◇1978
http://rakugakikan.main.jp/index.php?itemid=2175&catid=7
ぶどううり・くすこ「ALLAN(22冊揃)」(PDF)
http://xqo.ooh.jp/cc/by-nd/ALLAN01-15_01-07.pdf
2020年7月26日追記
こちらのトーク内容は「こころ」Vol.43(平凡社、2018)に掲載されました。
2023年2月4日追記
「京都精華大学国際マンガ研究センター年次報告書2018」に「イベント開催記録:「佐川俊彦×波津彬子×竹宮惠子 トークイベント 『JUNE』からやおいまで」が掲載されています。PDFでアップされており、全文読めます。
http://imrc.jp/publish/other/index.html
「イベント開催記録:「佐川俊彦×波津彬子×竹宮惠子 トークイベント 『JUNE』からやおいまで」(pdf)
http://imrc.jp/images/upload/publish/other/data/report2018-05.pdf